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新境地開拓のためにも三次元映像の自社ハ-ドを手がけようかと検討している時に、人を介して、会いたいと言ってきた男があった。
そう、Kである。
「例のソニーと任天堂とのいきさつは知っていましたから訊いてみると、ソニーさんは、自社で家庭用のハ-ドをやりたいということでした。
ところが、ウチも自社ハ-ドをやりたいと思っていましたから、そのことを言うと、Kさん、警戒されたようでした」(中村専務)。
そんな時、日本工業新聞の一面にソニーが画期的な映像処理ICを開発したとのスクープ記事が出た。
今から考えると、それがプレイステーションに搭載した画像エンジンではなかったかと、中村専務は思う。
「これは何ですか」とKに電話してみると、「そんなの知りませんよ」ととぼけられた。
でも、さらに追求してみると、「それでは…」と、PS|X計画について明してもらった。
九三年秋には3D技術を向上させて、業務用レ-シングゲ-ムの『リッジレーサー』を開発した。
この時に3Dの完成度が飛躍的に高まった。
と同時に、これが家庭用に展開できたらなと思うようになってきた。
そんな機運が社内で高まってきた時に、ちょうど、ソニーの一O号館でのデモンストレーションがあったのである。
「あの時は、実際の試作機で三次元CG画像を見せてもらいました。
私自身は、想像していたとおりのものが出たから、あまり驚かなかった。
それより、O会長とウチの中村社長が握手している写真を撮影したことが、記憶に残っていますね」(中村専務)。
ナムコはプレイステーションに賭けた。
「一台でも多く、プレイステーションを伸ばすのがナムコの使命でした」とナムコの原口取締役はきっぱりと一言う。
「ナムコがプレイステーションに加わるからには、是非ともナンバーワンのプラットフォームになって欲しいと思いました。
我々はスーパーファミコン用ソフトの開発を完全にストップさせてまで、プレイステーションに賭けました。
それまでスーパーファミコンで一〇〇億円以上、売り上げていたのだから、この決断は大きい。
思い付きだけでは、采るフォーマットは変えられません」。
セガはもともとアーケード・マーケットでは、ナムコの宿命のライバルである。
そのセ、力がやるセガサタ-ンに安易に乗るわけにはいかないから、必然的にプレイステーションを選択する。
だからナムコとしては、セガサタ-ンではなく、プレイステーションを伸ばすのが最大の使命であった。
家庭用で強いフォーマットにつきたい、しかも業務用も三次元でやりたいーーその二重の思いが、ナムコをしてプレイステーション陣営参加の初名乗りを上げさせたのである。
ナムコの第一弾リリース、そしてプレイステーションのソフトとしても第一弾リリースの、『リッジレーサー』は大ヒットを記録した。
ご時はプレイステーションの販売台数より、多い本数が出ましたよ」(中村専務)。
ドライピングゲ-ムは、ハードの技術革新をいちばん早く取り入れることができるジャンルである。
それまで平面上での走行だったのが、奥行きのある三次元画面で走れるなら、それだけでも表現の革新なのである。
車だけではなく背景も三次元グラフィックスを使って描画するため、コースを逆走した場合の画像も表示できた。
あの当時、アーケードゲ-ムの内容がそのまま家庭で楽しめるなんて、ユーザーにとっては、まさに思いもよらないことだった。
『リッジレーサー』で、プレイステーションは熱狂的に受け入れられたのだ。
「ナムコさんは我々にとって、偉大な存在です」と言うのはY(現・SCEI副会長)だ。
「これまでのことを振り返ってみると、ゲーム戦争はまるで、オセロでした。
オセロは途中どんなにうまくいっていても、四角を取っていなかったら、最後に大逆転され、色を塗り変えられてしまいますよね。
プレイス-テシヨンの場合の四角取りは、まさにナムコさんの参加が、そのきっかけでした」ナムコで角を押さえ、それから二年後にスクウェアでその対の角を押さえ、さらにエニツクスでその隣の角を押さえた。
この三角が白黒大逆転の立て役者となった。
九六年一二月はセガサタ-ンと競っていた。
ところが、九七年一月からセガサタ-ンとの差が聞き始めた、これは一月に『ファイナルファンタジー四』が発売されたことの影響である。
そんなきっかけを作ってくれたナムコに、いくら感謝してもし足りないYであった。
ソフトメーカーをいかに呼び込むか。
その第一の仕掛けは3D技術だった。
まず各ソフトメーカーとの初回の会合では、口頭で説明しただけだった。
しかし、映像なしにいくらその凄さを説いても、相手は動かない。
ソニーのような家電メーカーには、ゲーム進出は無理というリアクションがほとんどだった。
しかし、二回目に行ったデモビデオでの三次元の映像の衝撃は予想以上だった。
百聞は一見に如かずーーという諺は、まさにプレイステーションのプロモーションのためにあった。
彼らの欲望を刺激する仕掛けが、その三次元映像には秘められていた。
D社を初めて訪問したのは九三年五月二八日。
「最初の一年で最低一〇〇万台を売らないとダメ。
ソニー自身がいいソフトを作らないとダメ。
価格は実売で二万円を切りたい。
家電メーカーは決断が遅いから、信用が置けない…」とお手並み拝見とクールに言っていた。
ところが、七月二七日の二回目の会合でデモ画像を見せたら、五万円住でできるとは、とても信じられない。
CGをやっている人間(当時自社製品のTVコマーシャルのために、ワークステーションで制作した三次元CG画像を制作していた)は、なぜこれがパソコンより先にゲ-ム機で出るのかと思うに違いない。
三次元CGでゲ-ム機が本当にできるというのは疑問に思っていたが、驚いた。
テクスチャ・レンダリングや恐竜が動くCGが素晴らしいですね。
これでは、並みのゲ-ムメーカーでは簡単にソフトは作れないなあ」という感想だった。
まさにか百聞一見どの効果であった。
ど社も五月二八日には、「ソニーがどのくらいこの事業に本気なのか分からない。
いくらハ-ドが優秀であっても価格が高くては売れませんよ。
技術的に素晴らしいものであっても、ユーザーが求めているものと異なれば伸びません。
基本的には参入してもいいかなと思うが、スペックがもっと開示されないとなんとも言えない」と、斜に構えた言い方をしていた。
ところが、七月二一日に再度ど社に説明ピデオを見せると、「この性能は凄い。
期待していたよりはるかに素晴らしい。
ただし、技術的には素晴らしいが、全世界での販売戦略がいつはっきりするのか、これを確認しないと参入の判断は最終的にはつかない」と、デモ映像の内容を見て、明らかに態度が変わった。
コナミの北上常務も、前述した六月二四日の第一回会合では一般論に終始した。
「CD-ROMにしたことについては、どんな新しい遊びができるか、ということが提案されていませんね。
メガドライブやPCエンジン程度では、マスクROM(任天堂がスーパーファミコンに使用していたメディア)が安くなったほうが面白い。
ゲームの映像がきれいになったと言っても、家庭用「うーん、凄すぎて、のテレビではたかが知れていますよ」と、クールな対応だった。
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